怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記53 がん治療の正解

人間だれしも最後は死ぬ。それは分かっているが、「あなたの余命はあとひと月です」と死を予告されると、「ちょっと待ってよ、まだ死にたくない」とうろたえる。ボクなどはきっとその典型だろう。「まだ治療法があるのではないか」と諦めがよくない。そして効くのではないかと聞きつけた治療法を試す。その可能性を否定できないのだ。

がんの治療法に関して週刊東洋経済が「がん治療の正解」という特集を組んでいた(95日号)。その中で気になった記事を二つ、三つ。

ジャーナリスト岩澤倫彦さんの「効かない治療が野放し」は、自由診療の免疫クリニックをばっさり。「患者の血液から免疫細胞を取り出し、増殖や活性化させて体内に戻す免疫細胞療法は、1990年代から多くの臨床試験が行われたが、有効性は証明されていない」とし、「それで治療するのは極論すると詐欺に近い」とのノーベル賞の本庶佑先生の言を引用している。それなら禁止すればよさそうだが、「日本では医師の裁量権が広く認められているので、有効性が証明されていない自由診療は、違法ではない」。

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健康保険で採用されているのを「標準治療」と称するので、お金はかかるがもっと効く治療法があると誤解するが、がん治療では、有効性が証明された最もすぐれた治療法のことで、基本的に保険採用されている。だとすると一回150から300万円の高額療法は、金だけでなく命まで奪う恐ろしい商法。編集委員の長谷川隆さんによると「怪しい治療法にだまされるのは教育レベルが高い人」とのアメリカの分析がある。

コロナの影響でがん検診受診率が半減。それで来年度のがん患者は増えれば、検診の有効性の証拠になるが、増えなかったら検診の壮大な無駄が証明される?

顧問 喜多村悦史

2020年09月21日