怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記54 検診割引券

 夕方、家路に着くため最寄りの地下鉄駅を出ると、居酒屋の店員たちが割引券をくれる。「お得感」に釣られて寄ってみたい気持ちも湧くが、夕食を用意して待っている家人の顔を思い出し、割引券はポケントを押し込み、通り過ぎることになる。渡すアルバイトは相手を選べばいいのにと思う。独身者に狙いを定めるとか、近隣の会社から出てきて駅の入り口に向かう者を呼び込むとか。

 ところで居酒屋が割引券を配る理由は明らかだ。客数が増えれば、売上単価の減を補って余りある。収益増につながるからである。

 官公署が割引をすることはどうか。例えば交通反則金の割引券を配ることで、駐車違反者を増やし、検挙数増加を増やそうとするなどである。普通の感覚では、頭がおかしくなったかと非難轟轟(ごうごう)になるはずだ。

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 区役所からがん健(検)診割引券を送ってきた。年齢によって種類が違うようで、今年は「大腸がん検診」「胃がん(バリウム)検診」「肺がん検診」の3種類。居酒屋の割引は1割程度だが、区役所は太っ腹だ。受診者が払うのは、前二者で500円、もうひとつも800円。本来の料金は書いていないが、5000円から8000円程度とすれば、割引率は実に9割である。飛びつきたくなるはずだが、利用率は高くないらしい。

 検診でほんとうに命を救われるなら、健康意識が高い国民は先を争って割引検診を受けるはず。にもかかわらず大盤振る舞いするのはなぜか。週刊東洋経済の「がん治療の正解」(95日号)では、大腸がん検診「便潜血法」や肺がん「X線検査」では発見率が低く、安心するには毎年受診が望ましい。利用者にがっちり払わせる。胃がん検診のバリウムが腸壁に固着して穴が開く事故があるなどの情報周知は十分か。

 

顧問 喜多村悦史

2020年09月22日