怒苦打身日記 ~協会顧問 喜多村悦史のブログ~

怒苦打身日記57 記憶術

「これは重要だから覚えるように」

 だけど人間は片端から忘れていく。「右の耳から左の耳に通過する」間の一瞬だけ脳内に留まる。覚えるには、繰り返して言葉にし、ノートに書くなどの補助手段が必要なのだ。ある人は次のようにまとめた。

 人間の記憶に残る確率は、読んだことの10%、聞いたことの20%、見たことの30%。ただし自分で口にすれば80%、さらに実行すれば90%に跳ね上がる。

「こういう話を聞いたことがあるか」の質問への「記憶にない」はありうるが、「覚せい剤を打っただろう」に「記憶にない」の返答は信用性に欠けるわけだ。

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 高校時代のボクは英語で苦労した。単語を覚えられない。「英単語はノートに5回つづり(スペル)を書けば覚えられる」。先生のアドバイスを実践したが、期末試験は無残な結果に終わる。隣のクラスに、驚異的な語彙数を誇る生徒がいた。進学後の下宿が数件先だったので、ちょくちょく訪問する仲になった。

 ある日、彼が煙管(キセル)用の刻みタバコが入った缶を取り出し、次にドイツ語の辞書の1ページを破り取った。そしてタバコをひとつかみ辞書紙に載せると、器用に巻き始めた。

「巻きタバコには辞書の紙が一番向いているのだぜ」。

 

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戦時中、あるいは戦後の一時期に、消しモクを辞書紙で巻いて吸う映画シーンがあるが、実際を目にするのは初めてだった。「一日5本、裏表で10ページ分の単語を覚えるのを日課にしている」と彼は笑い、ボクにも1本勧めた。

「高校時代の英単語もこうして覚えたのか」。彼がどう答えたか、忘れてしまった。

 

2020年09月24日